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持ち家は資産?家計診断では「時価」と「使えるお金」を分ける
「持ち家は資産だから、老後は安心」と言われることがあります。たしかに持ち家は資産です。けれども、家計診断では、持ち家の時価と、すぐ使えるお金を分けて見ないと危険です。家を売れば現金になりますが、売った後にも住む場所が必要だからです。
家は資産?
タヌキ: 家あるし安心?
家計表を見ながら
1- 2
ラッコ: 今日の支払いは?
- 3
タヌキ: そこは現金
- 4
ラッコ: 別で見たいね
結論|持ち家は資産ですが、生活防衛資金や教育費の支払いにそのまま使える資産ではありません。家計診断では、「住宅の時価」「住宅ローン残高」「金融資産」「すぐ使える現金」を分けて、純資産とキャッシュフローの両方を見ます。
国土交通省の不動産価格指数は住宅価格の推移を見る資料です。ただし、自分の家の売却価格は、地域、築年数、管理状態、駅距離、需給、売却時期で変わります。家計の安全性を見るときは、時価を高く見積もりすぎないことが大切です。
純資産が多くても、現金が少ない家計は苦しい
たとえば、住宅の時価が4,500万円、住宅ローン残高が3,200万円なら、住宅部分の純資産は1,300万円です。さらにNISAなどの運用資産が600万円、預金が300万円あれば、家計全体の純資産は2,200万円です。
この数字だけを見ると余裕があるように見えます。ところが、すぐ使える現金は300万円です。教育費、修繕、失業、病気が重なれば、NISAを売るか、借入を増やすか、家計を大きく削る必要が出るかもしれません。
持ち家世帯の家計診断で分けたい数字
仮例。純資産は大きくても、すぐ使える現金は別に見ます。
住宅時価の考え方: MLIT-REAL-ESTATE-PRICE-INDEX-2026。家計資産の把握: JFLEC-HOUSEHOLD-FINANCE-2025。
家計診断では、純資産の大きさだけでなく、毎月の返済、教育費、保険料、固定費、投資額の流れを同時に見ます。住宅は家計の中心にありますが、現金の代わりにはなりません。
持ち家の時価は、保守的に見る
住宅の時価を見積もるときは、近隣の成約事例、不動産会社の査定、国土交通省の価格関連データなどを使えます。ただし、査定額は売れることを保証しません。売却時には仲介手数料、引っ越し費用、ローン完済、税金なども関係します。
家計診断では、楽観的な査定額をそのまま使うより、少し保守的に置いたほうが安全です。特に、老後資金や教育費の不足を「家を売れば大丈夫」と考える場合は、売却後の住居費も入れる必要があります。
持ち家は、売る、貸す、住み続ける、住み替える、リバースモーゲージを検討するなど、選択肢があります。どれにも条件やリスクがあります。現役時代から、住宅を純資産表に入れつつ、生活費に使うお金とは分けておくほうが判断しやすくなります。
住宅ローンは負債として毎年見直す
住宅ローン残高は、毎年減っていきます。固定金利なら返済予定は読みやすく、変動金利なら金利上昇時の返済額を確認する必要があります。住宅金融支援機構の金利情報は、公式に金利情報を確認する入口になりますが、個別の借入条件は金融機関ごとに異なります。
家計診断では、住宅ローン残高を「いずれ減るから大丈夫」と軽く扱わないほうがよいでしょう。教育費のピークや退職時期と重なると、毎月返済は家計の柔軟性を下げます。繰上返済をするか、現金を残すか、NISAを続けるかは、金利だけでなく手元資金の厚さで決めます。
老後は「住む家」と「使うお金」を分ける
老後の安心には、住む場所があることは大きいです。家賃負担がない、または低いことは、年金生活の支出を抑えます。ただし、固定資産税、管理費、修繕費、リフォーム費用は残ります。マンションなら管理費と修繕積立金が上がる可能性もあります。
老後資金を考えるときは、「持ち家があるから必要額はゼロ」ではなく、「住居費が抑えられる分、毎月不足額がどれだけ減るか」と考えるほうが現実に近くなります。家そのものの時価より、年金と支出の差額が重要です。
家計表では3つの欄に分ける
持ち家を家計表に入れるなら、少なくとも3つに分けます。第一に、住宅の推定時価です。これは純資産を知るための数字です。第二に、住宅ローン残高です。これは将来の返済義務です。第三に、現金化しやすい金融資産です。これは教育費、失業、医療、修繕に対応するための数字です。
この3つを混ぜると、「純資産は大きいのに、毎月は苦しい」という状態を見落とします。住宅時価が上がっても、月々の返済や教育費は自動では楽になりません。逆に、住宅時価が一時的に下がっても、住み続けられ、返済が無理なく、現金があれば家計は回ります。家計診断では、時価評価と支払い能力を分けることが実務上の出発点です。
売る予定がない家は、保守的に扱う
売る予定がない持ち家を、老後資金の主力として数えると計画が楽観的になりやすいです。将来、住み替えや売却をする可能性はありますが、売却時期、価格、次の住まいの費用は読みにくいからです。家計診断では、持ち家を純資産には入れつつ、毎月の不足額を埋める資産としては控えめに扱います。
特に、夫婦どちらかが住み続ける前提なら、家を売って生活費にする判断は簡単ではありません。介護施設への入居、子どもとの同居、地方から都市部への転居など、生活上の大きな変化が必要になります。だからこそ、持ち家の時価とは別に、現金と運用資産を作っておく意味があります。
理屈っぽい人のための補足
家計の純資産と流動性を分ける
家計のバランスシートは、次のように分解できます。
純資産が2,000万円あっても、その大半が自宅なら、支払い能力は限定的です。反対に、純資産がまだ少なくても、住宅ローンが軽く、生活防衛資金が十分なら、短期の家計安定性は高いことがあります。
住宅時価を入れるときの感度分析
住宅時価4,500万円、ローン3,200万円なら住宅純資産は1,300万円です。もし売却価格が10%下がって4,050万円なら、住宅純資産は850万円です。20%下がって3,600万円なら400万円です。売却費用を入れると、さらに小さくなります。
この感度を見ておくと、「家があるから大丈夫」という一言では済まないことが分かります。住宅は家計の大きな資産だからこそ、強気の価格だけで老後や教育費を計画しないほうがよいのです。
参考・出典
- [MLIT-REAL-ESTATE-PRICE-INDEX-2026] 国土交通省「不動産価格指数」(2026年6月4日確認)
- [JHF-RATES-2026] 住宅金融支援機構「金利情報」(2026年6月4日確認)
- [JFLEC-HOUSEHOLD-FINANCE-2025] J-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査」(2026年6月3日確認)