高成長の国・企業へ投資すれば儲かる?株式リターンとリスクプレミアム
「人口が減る日本より、成長する国の株式を買ったほうがよい」「AIの市場は伸びるから、関連企業へ投資すれば儲かる」。どちらも、もっともらしく聞こえます。
経済や企業が成長することは、社会にとって望ましいことです。しかし、良い経済、良い企業、良い投資対象は同じ意味ではありません。多くの人が高成長を予想していれば、その期待は株価にも反映されます。
伸びるなら買い?
タヌキ: AI、伸びるらしい
ニュースを見ながら
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タヌキ: じゃあ買い?
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ラッコ: みんな知ってたら?
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タヌキ: もう、動いてるかも
結論|株式の将来リターンは、成長率の高さだけでは決まりません。現在の株価が、将来の利益やリスクをどこまで織り込んでいるかが重要です。低成長でも、それに見合う株価で買えるならリターンを得られます。反対に、高成長でも期待が株価へ強く反映されていれば、期待どおりに成長しただけでは高いリターンにならない場合があります。
株式リターンは、成長率だけでは決まらない
株式を保有する投資家が受け取るリターンは、配当、株価の変化などから生じます。企業の売上や利益が増えることは大切です。しかし、株式を買う時点の価格も同じくらい大切です。
たとえば、来年105万円になると見込まれる資産を100万円で買えば、1年後のリターンは5%です。同じように、来年210万円になると見込まれる資産を200万円で買っても、リターンは5%です。後者の増加額は大きいものの、投資した金額に対する収益率は同じです。
成長率と投資リターンを分けて考える説明用シナリオ
期待どおりに推移する二つのケースと、予想を上回るケースを比較します。個別銘柄の予測ではありません。
計算: (1年後の価値 - 購入価格) / 購入価格。株価には将来への期待が反映されるという考え方を単純化した例です。研究背景: [RITTER-GROWTH-RETURNS-2005]。
実際の株価は、この例よりはるかに複雑です。それでも、「成長率が高い」と「買ったあとに高いリターンが得られる」を区別する助けにはなります。投資家にとって重要なのは、広く知られている成長予想そのものだけではなく、現在の価格に織り込まれた予想を上回る変化が起きるかどうかです。
低成長という理由だけで、投資対象から外す必要はない
人口減少や低成長を理由に、日本株を投資対象から外したくなることがあります。しかし、低成長が広く知られているなら、その見通しは市場価格にも影響しています。
Jay R. Ritterは2005年の論文で、経済成長と株式リターンの関係を理論とデータの両面から検討しました。16か国の1900年から2002年までのデータでは、1人あたり実質GDPの複利成長率と、株式の実質リターンの間の国別相関は -0.37 でした。高成長の国ほど株式リターンも高い、という単純な関係は確認されませんでした。
この結果だけから、低成長国を積極的に買えばよいとも言えません。対象は16か国であり、期間の取り方、上場企業の構成、戦争や制度変更、生存者バイアスなども考える必要があります。論文の重要な点は、GDP成長率だけを使って株式リターンを予測することが難しい、ということです。
株式の期待リターンは、リスクプレミアムと関係する
期待リターンとは、将来の成果を約束する利回りではありません。複数の結果が起こりうるなかで、確率を踏まえて考える平均的なリターンです。
リスクプレミアムとは、不確実な資産を保有することに対して、投資家が追加で求める収益のことです。株式には、企業利益の悪化、景気後退、倒産、価格変動などのリスクがあります。預金や短期国債のように値動きが小さい資産より高い期待リターンが見込まれなければ、多くの投資家は株式を保有しようとしません。
ただし、株式リスクプレミアムを一つの固定値で正確に表すこともできません。Rajnish Mehraが2003年のNBERワーキングペーパーで解説した エクイティプレミアム・パズル は、過去に観測された株式の超過リターンが、標準的な経済モデルで説明しにくいほど大きいという研究上の問題です。リスクプレミアムは重要な概念ですが、「株式なら毎年何%増える」と保証する数字ではありません。
話題の成長テーマへ集中するときほど、株価も重視する
AI、半導体、宇宙、再生可能エネルギー、新興国。成長を期待されるテーマは定期的に登場します。事業の将来性を学ぶことには意味があります。しかし、投資判断では、良いニュースがすでにどこまで株価に織り込まれているかを考える必要があります。
高成長を予想する人が増えれば、株式を買いたい人も増え、価格は上がりやすくなります。その後に高いリターンを得るには、実際の成長が期待をさらに上回る必要があります。逆に、事業が成長しても、市場の期待を下回れば株価が下がることがあります。
個別の国、産業、企業が割安かを継続的に判断するのは簡単ではありません。そこで、資産形成では、低コストで広く分散された株式インデックスを中核にする方法が候補になります。全世界株式を選ぶ場合でも、将来のリターンは保証されません。しかし、「どの国が次に予想以上の成長をするか」を予想して、一国に絞る必要はなくなります。
オルカンとS&P500を比較した記事では、全世界株式と米国株式の違いを、指数の対象範囲と国別構成から整理しています。
株価指数が高く見えるときも、判断の順番は変わらない
株価指数が過去の高値に近いと、「今から買うのは遅いのでは」と感じます。しかし、過去の高値かどうかだけで、今後のリターンは決まりません。企業利益、金利、リスクへの見方、将来予想が変われば、妥当と考えられる価格も変わります。
だからといって、現在の価格が常に適正だと断定するわけでもありません。割高な局面も、割安な局面もありえます。問題は、個人投資家がその差を継続して見抜けるかです。
積立投資では、相場の水準を理由に毎月の買い付けを頻繁に変えるより、家計に無理のない積立額と、保有できるリスク資産の総額を先に決めるほうが実行しやすくなります。
理屈っぽい人のための補足
株価は、将来キャッシュフローの割引現在価値として考えられる
単純化すると、株式の価格は、将来、株主が受け取ると期待されるキャッシュフローを、リスクに応じた割引率で現在価値に換算したものとして考えられます。
高い成長率が予想されると、将来キャッシュフローの予想は大きくなります。一方、その成長への期待が強まれば、現在の株価も上がります。買ったあとのリターンに影響するのは、予想された成長だけでなく、予想の変化です。
経済成長が既存株主へ帰属するとは限らない
Ritterの論文は、経済成長と既存株主のリターンが一致しない理由を複数挙げています。たとえば、個人の貯蓄が新しい企業へ投資されて経済が成長しても、その成果は、すでに上場している企業の既存株主へ自動的に入るわけではありません。既存企業が増資して成長資金を得る場合も、成長による利益と既存株主の取り分は分けて考える必要があります。
技術進歩も同様です。社会全体の生産性が上がり、消費者や労働者が利益を得ても、競争が激しければ、特定企業が長期間にわたり超過利益を維持できるとは限りません。
期待リターンは、過去平均の言い換えではない
期待リターンを「過去20年間の平均リターン」と同じ意味で使うと、判断を誤りやすくなります。どの期間を選ぶかで平均値は変わり、現在の価格水準も変わっています。
概念上は、株式の期待リターンを次のように分けると理解しやすくなります。
この考え方は、「低成長だから株式リターンも低い」「高成長だから株式リターンも高い」という短絡を避けるのに役立ちます。株式のリターンは、成長率だけでなく、価格、リスク、予想の変化を含む問題です。
シミュレーターでは複数の利回りを比べる
積立シミュレーターの想定利回りは、将来の保証ではありません。高い利回りを一つ選んで必要額を逆算するより、保守的な条件も含めて複数の利回りを試すと、教育費や住宅購入後にも積立を続けられるかを確認できます。
参考・出典
- [RITTER-GROWTH-RETURNS-2005] Jay R. Ritter「Economic growth and equity returns」(2026年6月1日確認)
- [NBER-MEHRA-EQUITY-PREMIUM-2003] NBER「The Equity Premium: Why is it a Puzzle?」(2026年6月1日確認)
- [YAMAZAKI-GROWTH-2017] トウシル「あなたの投資常識にチャレンジする10問!」(2026年6月1日確認)
- [YAMAZAKI-RETURN-2023] トウシル「期待リターンはどこから来るのか?」(2026年6月1日確認)