Insight

iDeCoの出口で税金はどうかかる?退職所得控除と年金受取を整理する

iDeCoは「掛金が所得控除になるからお得」と説明されることが多い制度です。入口のメリットは大きいのですが、出口を見ないまま掛金を増やすと、退職時に迷います。受け取り方によって、税金の扱いが変わるからです。

出口もある

  1. タヌキ: 節税できた

    老後資金メモを見て

    1
  2. ラッコ: 受け取る時は?

    2
  3. タヌキ: そこ、あとで…

    3
  4. ラッコ: 今見よ

    4

結論|iDeCoは、一時金で受け取ると退職所得、年金で受け取ると公的年金等に係る雑所得として扱われます。退職所得控除や公的年金等控除があるため、多くの場合は税制優遇があります。ただし、退職金が大きい人、受取時期が重なる人、60代以降の所得が多い人は、入口の節税額だけで判断しないほうがよいです。

国税庁のタックスアンサーでは、確定拠出年金法に基づく老齢給付金として支給される一時金なども退職所得とみなされると説明されています。退職所得控除の計算式も公表されています。制度や税制は変わりうるため、受取が近い人は受取年の最新情報を確認してください。

一時金は退職所得として扱われる

iDeCoを一時金で受け取る場合、退職所得として扱われます。退職所得は、原則として次のように計算されます。

退職所得控除の目安

国税庁の計算式をもとにした例。勤続年数等の扱いは個別に確認が必要です。

10年400万円
20年800万円
30年1,500万円

出典: NTA-RETIREMENT-INCOME-2026。

20年以下なら40万円×年数、20年超なら800万円+70万円×(年数−20年)です。退職所得の金額は、原則として「収入金額 − 退職所得控除額」の2分の1です。この仕組みがあるため、一時金受取は税制上有利になりやすいと言われます。

ただし、退職金とiDeCoを同じ時期に受け取る場合、控除枠を共有するように扱われる場面があります。会社の退職金が大きい人ほど、iDeCoの一時金をどう受け取るかが重要になります。

年金受取は公的年金等の雑所得

iDeCoは年金として受け取ることもできます。iDeCo公式サイトでは、有期年金として5年以上20年以下で受け取れると説明されています。年金受取の場合は、公的年金等に係る雑所得として扱われます。

年金受取には、公的年金等控除が関係します。公的年金、企業年金、iDeCoの年金受取などが合わさるため、他の年金収入が多い人は課税額が増えることがあります。一方、一時金で退職所得控除を使い切るより、年金で分けたほうがよい場合もあります。

どちらが有利かは、退職金額、公的年金額、iDeCo残高、受取期間、他の所得、配偶者の状況で変わります。単純に「一時金が得」「年金が得」とは言えません。

併用は、税と資金繰りの折衷案

金融機関によっては、一時金と年金を組み合わせる受取方法もあります。たとえば、一部を一時金として受け取り、残りを年金で受け取る方法です。大きな支出がある退職直後は一時金を使い、その後は年金的に受け取る、といった設計ができます。

ただし、受取方法の選択肢は金融機関によって異なります。手数料も関係します。iDeCoは運用中だけでなく、受取時にも金融機関のルールを確認する必要があります。

50代は、出口から逆算して掛金を決める

50代でiDeCoを始める場合、拠出期間は長くありません。その分、入口の所得控除は魅力的に見えますが、受取時期も近くなります。会社の退職金があるなら、退職金の見込み額と受取時期を確認してから、iDeCoの掛金を決めたいところです。

退職金が少ない、またはない人は、iDeCoの一時金が退職所得控除に収まりやすい可能性があります。退職金が大きい人は、NISAとの併用や、iDeCoの掛金を控えめにする選択もありえます。

受取方法は、税金だけで決めない

一時金と年金のどちらが税制上有利かは重要です。ただし、受取方法は税金だけで決めるものではありません。退職直後に住宅ローンを完済したい、子どもの結婚や住宅支援を考えている、親の介護費を見込んでいる、再雇用収入がある、など、家計の予定によって必要な現金の形は変わります。

年金受取は、資産を少しずつ使う仕組みにしやすい一方、受取期間中の手数料や公的年金等との合算を確認する必要があります。一時金はまとまった自由度がありますが、大きなお金が普通預金に入るため、投資商品や保険商品を勧められやすい時期でもあります。退職時は、税制、手数料、使う予定、勧誘への耐性を合わせて考えるほうが安全です。

退職が近い人は、退職金の見込み、iDeCo残高、公的年金見込額を一覧にし、受取年を複数パターンで比べます。厳密な税額計算は税理士等の領域ですが、どの年に大きなお金が入るかを把握するだけでも、判断の質は上がります。

金融機関のおすすめだけで決めない

iDeCoの受取時期になると、金融機関からさまざまな案内が届きます。手続きの案内は必要ですが、受け取ったお金の運用先まで急いで決める必要はありません。退職直後は、まとまった資金があるため、保険、外貨建て商品、毎月分配型商品などの提案を受けやすい時期でもあります。

まず決めるのは、受取後のお金を何年以内に使うかです。1〜3年以内に使うお金をリスク商品に入れる必要はありません。10年以上使わない部分だけ、NISAや課税口座で分散投資を検討します。iDeCoの出口は、税金の話で終わりではなく、受け取った後の資産配分まで含めて考えると失敗しにくくなります。

理屈っぽい人のための補足

退職所得の式を分解する

国税庁の説明に沿うと、退職所得の金額は原則として次の式です。

たとえば、退職所得控除が800万円で、iDeCo一時金が600万円なら、退職所得はゼロです。iDeCo一時金が1,000万円なら、差額200万円の2分の1で100万円が退職所得になります。ここに所得税率等がかかります。

入口の節税額と出口の税額は同じ税率で比べない

iDeCoの入口では、現役時代の所得税率と住民税率が関係します。出口では、退職所得控除や公的年金等控除、退職金との合算、他の所得が関係します。したがって、入口で20%軽減されたから出口も20%課税される、という単純な話ではありません。

制度の有利さは、税率差、控除、運用益非課税、資金拘束を合わせて見ます。特に高所得の現役時代に所得控除を受け、退職後に低い所得で受け取れる人は有利になりやすい一方、退職金が大きい人は出口の設計が重要になります。

参考・出典

この続きを読む

同じタグの記事

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘や個別の投資助言ではありません。最終的なご判断はご自身の責任において、必要に応じて専門家にご相談ください。